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このオペラのここが好き! ワルキューレ(ワーグナー)



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戦争が終って神保町にも数軒の中古レコード屋が戻って店開きを始めました。LPの前のシェラック盤で戦前に発売されたレコードの中にポリドール社のワルキューレの愛の二重唱がありました。ジークリンデ――フラッグシュタット、ジークムント――メルヒオールの二重唱です。これが私のワーグナーの楽劇の片鱗にはじめてふれたときです。

ジークリンデが Du bist der Lenz nach dem ich verlangte in frostigen Winters Frist (氷ついた冬の日々に待ち焦れた春こそあなたなのよ)と歌うところから始ってジークムントが続きます。この叙情的なくだりにすっかり参って何回もくり返し聴きました。このレコードは、その後キャビネットごと盗難にあって行方不明となりました。今でも残念に思っています。毎度カビ臭い話でご容赦願います。

新国立、二期会、バイエルン国立オペラなどでワルキューレを観る機会は他の指環より多かったのですが、演出はどれも抽象的で大きなガラスの箱や建設中のビルの鉄骨の中のようなフンディングの館が現われて私には興覚めでした。

ところが、二十四、五年前メトロポリタンのオットーシェンクの演出は全く異ったオリジナルと称するか古典的と称するか、ジークリンデとジークムントの愛のシーンが始まると館の大きな戸が開き月の光とともに春のいぶきが二人を包み込んだようで、私は全身がしびれるような感動を覚えました。この時の指揮はレヴァイン、ブリュンヒルデはギネス・ジョーンズ、ウォルタンはジェイムス・モリス、愛の二人はS・ハス、G・レイクスと私はメモっていました。この後、何回もこの楽劇に接しましたが、この様な感動的なシーンにめぐり会うことはできません。ここがこの楽劇の好きなところです。この楽劇の終幕のウォルタンとブリュンヒルデとの別れは、父親の娘に対する思いが痛いほど理解できます。ここもまた好きなところです。

戦後、ワーグナーの楽劇は大方が哲学的にしてサイケデリックな演出ばかりです。二才年上の知人に熱心なオペラファンがいます。京都在中の医師ですが好きなオペラが東京で上演されると夫人を伴って上京してきます。抽象的な演出が大嫌いで「哲学の授業を受けに来た訳ではないからね」と両眼に眼帯をかけて観賞しています。このような唐変木もいるということです。 (Y)

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私の「ワルキューレ」初体験は1972年東京文化会館での二期会の原語上演であり、1974年ミュンヘンオペラ(バイエルン国立歌劇場)来日公演と続きます。当時は予備知識もなくて、睡魔と闘いながら「ワルキューレの騎行」や最後のエンディングにただただ感動したものです。

今日まで「ワルキューレ」は来日公演や国内公演を数多く鑑賞していますが、やはり第3幕3場の「ヴォータンの告別」とそれに続く「魔の炎の音楽」に惹かれます。 特に「ヴォータンの告別」でヴォータンがブリュンヒルデの顔を両手で包みながら「お前から神は去ってゆく・・・私の口づけがお前から神性を奪うとき」。そして、オケのみの間奏が始まる。その音楽は実に美しくて毎回聴くたびに陶酔してしまう。ゆったりとした流れで父と娘の愛の深さを感じます。その数分のメロディーが極上の喜びを与えてくれます。その音楽が流れる中、ビュルンヒルデは目を閉じ、静かに体の力を抜きながら、ヴォータンの腕の中に倒れていく。・・・大きなモミの木の苔むす丘の上に横たわるブリュンヒルデから目をそらすことはできない。そらしたかと思うとまたもう一度苦悩に満ちた眼差しで振り返る。ヴォータンは意を決して舞台中央で手にした槍の穂先を巨大な岩へ向ける。そしてヴォータンは、「ローゲ!よく聞け」「Loge,hor! Lausche,hieher!」・・・ヴォータンは再び「Loge!Loge!Hieher!」 やがて岩山は炎に包まれ、ヴォータンは去ってゆく。感動の瞬間である。

最近は最後の場面はしばしばPMを使用する演出が見受けられるが、ここはやはり本物或いはそれに近い演出がふさわしいと思いますが・・・ (K)

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父親の考えを忖度(ソンタク)して(※何か少し前はよく聞いた言葉ですが※)娘が行動したら、父親は自分の体面を保つためにその娘を厳罰に処してしまうという、何とも理不尽と言えなくもないストーリーでしょうか。

単独でもよく取り上げられる第1幕は「ジークフリート第3幕」と共にいわゆるワーグナーの毒と言われる魅力がいっぱいにつまった音楽です。その毒とは、初めて飲んだ酒の味は少しもうまいとは思わないがいつの間にかやめられない味になるようなものです。第2幕冒頭でホヨトーホ!ハイアハー!と雄叫びを上げながらブリュンヒルデが登場する場面は何とも豪快で愉しく、第3幕の大詰めで「我が槍の切っ先を恐れるものは、この炎を横切ってはならない!」とヴォータンが歌い出すとジークフリートの動機が高らかに奏され、ヴォータンの槍を恐れない者は誰なのかを暗示させながら全曲を終わらせるところは、ワーグナーならではの音楽的演出の巧さです。でも・・ブリュンヒルデは親戚のおばさんになるのでは?(詳細は省略!)。そういえば兄妹夫婦!?も登場しますし、ニーベルングの指輪は変なストーリーですね。

この楽劇、最近では6月の名古屋祝祭管弦楽団の公演がなかなかの聴きものでした。歌手(もちろんプロ)たちの熱演も良かったのですが、それを支えたアマチュアオケの演奏とは思えない質の高いアンサンブルに驚かされました。 面白いのは第1バイオリンよりも第2バイオリンの方が人数が多かったことで、アマオケだからそんなことも出来るのでしょう。プロオケではまずありえないことです。 東京でもオペラ全曲を演奏するアマオケはありますが、ワーグナーにチャレンジした話は聞いたことがありません。アマオケがそんな大冒険をするはずがないと考えるのが普通かもしれませんが、名古屋なかなかやりますなぁ。 (M)

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「ワルキューレ」はリング四部作の中では、他の三作とは異質です。音楽もストーリーも聴き手の興味関心を高めるので、多分四作では一番人気もある作品ではないでしょうか。好き嫌いは別にして、こういう作品に接すると、ワーグナー作品は未来永劫に残っていくのだろうと想像させられます。

魅力的な音楽は随所に散りばめられている「ワルキューレ」ですが、一幕後半にジークムントによって歌われる「冬の嵐は過ぎ去り」は公演の度に、いい曲だなあといつも思いながら聴いています。

「ワルキューレ」好きの方には意外と思われる個所かもしれませんが、二幕のフリッカとヴォータンの夫婦喧嘩の場面は大変面白くて、フリッカの完勝に終わるこの場面で、情けなく落ち込んでいくヴォータンの姿を見ると可愛そうでなりません。女性の目(視点)から見ると、真逆な思いになるのでしょうね? では、素敵な演奏者による「ワルキューレ」を鑑賞することにしましょう。 (K)

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