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オペラ愛好会 第231回 例会開催 (2016.10.29)


10月29日(土)に新国立劇場内で関東例会が行われました。入会したばかりだったので、ドキドキしながら現地に向かいましたが、5階にある情報センターの入り口で声をかけてくださった会員のみなさんの温かい表情を見て、緊張が一気にほぐれました。

上映会の鑑賞演目は、当初はドニゼッティ作曲「ラ・ファヴォリータ」(1971年9月、東京文化会館)の予定でしたが、ロッシーニ作曲「チェネレントラ」(2009年6月、新国立劇場)に変更になりました。これは新国立劇場側の都合によるものです。

私事ですが、趣味の声楽の発表会で「ラ・ファヴォリータ」の中の「私のフェルナンド」という7分ほどのアリアを歌ったことがあるため、レオノーラ役のコッソットの歌声とこのオペラ全曲を聴く機会を楽しみにしておりましたので、やや残念ではありましたが、結果的には「チェネレントラ」を聴くことができて大満足できました。

とにかく歌手陣が豪華です。タイトルロールのチェネレントラ(アンジェリーナ)がヴェッセリーナ・カサロヴァ、そして王子ドン・ラミーロがアントニーノ・シラグーザです。また、公演当時、新国立劇場が「世界のロッシーニ歌いをキャスティングしました」と言っていただけあって、脇を固めている歌手もそろっています。アンジェリーナの継父ドン・マニフィコのブルーノ・デ・シモーネ、王子の従者ダンディーニのロベルト・デ・カンディアは歌だけでなく芝居巧者でもあり、たっぷり笑わせてもらいました。アリドーロのギュンター・グロイスベックは舞台を引き締め、義姉役の幸田浩子さん、清水華澄さんも、これだけのすばらしいキャストの中で、いい歌唱、いい演技を見せてくれました。

チェネレントラ(シンデレラ)と言っても、魔法使いのおばあさんもかぼちゃの馬車も出てきません。アンジェリーナが愛とやさしさと誠実さをもって、王妃への道をアリドーロの助けを得ながら自ら切り開きます。最後には、自分にひどい仕打ちをしてきた継父や義姉たちを許すという聖母のような慈愛も発揮して、大団円で幕が下ります。
普通の演劇ならば、ヒロインがあまりに理想的ないい子ちゃんすぎて食傷気味に感じてしまいそうです。ところが、これがオペラの不思議なところで、音楽と歌とともに鑑賞すると、このうえなく素敵な物語になって、幸せな気持ちいっぱいに包まれてしまうのです。

なにせ「ロッシーニ歌い」ばかりなので、あたかもアジリタ合戦(!?)のようです。メゾソプラノ、テノール、バリトン、バスそれぞれの持ち味たっぷりのコロコロ転がる軽やかな声が心地よいです。あんなに速く声を転がせるものなのかと舌を巻くとともに高揚感が増してきて、ロッシーニの音楽のとりこになってしまいます。中でも白眉は、シラグーザの軽やかでつややかな声です。言わずもがなでしょうけれど、それでも言わないではいられません。ハイCも難なく飛ばして、シラグーザを取り巻いている従者の役の男声合唱団メンバーたちが役を越えて、観客になりきっているような幸せな表情だったのが印象的でした。もちろん、観客の私たちもこのうえなくハッピーにさせられてしまいます。
唯一の憾みといえば、カサロヴァがどんなにみすぼらしいボロ着をまとって暗い表情で演技していても、立ち姿と歌声の見事さゆえに最初から女王のようにしか見えないというところでしょうか。役の中では最後に王妃になるのですが、私には王妃を飛び越えて輝かしい女王に見えました。

7年前に実演を鑑賞しましたが、そのときはただただ歌手のすばらしさに呆然となっていただけだったので、今回の上映会で改めて宝石をちりばめたようなロッシーニの音楽のひとつひとつを聴き、歌手の細かい表情を間近にしっかり見ることができて本当によかったです。すべてが見せ場、聴かせどころのような、息を抜けない2時間45分でした。 その後、レストラン「マエストロ」にて、遅れてきた方も含め、12名というにぎやかな食事会になりました。

関西からもベテランの会員さんがお一人いらっしゃっていました。翌日(10月30日)の藤沢市民オペラ「セミラーミデ」にお嬢さんがオーケストラの一員として演奏されるので鑑賞のためにいらしたとのことです。例会の翌日がお嬢さんの出演オペラというのも偶然ですし、上映会の「チェネレントラ」とロッシーニつながりというのも素敵なシンクロかもしれません。ほかにも「セミラーミデ」に行かれる予定のかたがいらして、まずはその話題になりました。決してメジャーとはいえない演目ですが、こういう話で盛り上がることができるのも、同好の士が集まっているからこそだとうれしくなりました。

オペラについて語らうと時間を忘れてしまいます。話が途切れることがなく、なごやかで楽しい会でした。フルコースの食事とともに、幸せな気持ちにひたれました。また、みなさんと例会やオペラ公演の会場でお会いできるのが楽しみです。(M)


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